主人公は、幼い頃から世間と考えることがずれている女の子。例えば、公園で死んでいる小鳥を見つけて、お父さんは焼き鳥が好きだし、妹は唐揚げが好きなことを連想する。小鳥を手のひらにのせて、母親のもとに行き、「食べよう」という。主人公にとって自然な考えは、母親や周囲の人には異常に思える。母親は、「小鳥さんかわいそうでしょ」と主人公に埋めてあげるように諭す。咲いている花を摘んで、小鳥を埋めた土の上に死んだ花をのせ、食べたアイスの棒をさす。母親や周囲の子供たちの行動が、主人公には異常に思える。

この(自分の所属する)世界の常識が分からない。そんな主人公が、コンビニ店員としてだけは、普通であるように演じられる。主人公は、コンビニで働く他の店員たちの話し方や話すフレーズを真似する。だから一緒に働く人によって、話し方がかわる。


人は自分の所属する世界 の常識に、自分の行動や言動を合わせようとする。自分がいる社会での当たり前をさがし、それに自分をあてはめようとする。違う常識を持つ社会で暮らすと、そこでの態度や言葉遣いに自分を近づける。だから、暮らす社会が変われば、個人も変わる。それは二つの全く違う人生のように。周りに居る人によって話し方が変わることは、その代表的なものの一つとしてこの本の中で挙げられている。


主人公は、36歳、独身、コンビニでアルバイトをしていて、恋愛をしたことがない。そのことを世間(友達や家族、他のコンビニ店員)からおかしく見られる。自分の所属する世間の常識と異なる考えを持つ主人公。そこでの常識を理解できず、順応できないことが丁寧に描かれている。現実社会では、周りの人間に理解されないこと、理解できないこと、変に思われるだろうから隠すことって、たくさんあると思う。そこで苦しんでいない人なんて、いないんじゃないかっていうくらいに。

 
コンビニ人間
村田 沙耶香
文藝春秋
2016-07-27






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