1950年に公開された白黒映画。

反戦争映画 

と、当時の不条理な社会への批判です:

自身の保身に走る大学教授、戦争中ということに理由をつけて暴力をふるう軍人、自身で考え自立せず権力に寄生する新聞記者(これが先の軍人と同一人物というところがまた考え深いところ)、社会的立場が弱く自立できず、子供の為に再婚せざる負えない母親、男尊女卑の夫に虐げられる妻、軍を去った主人公の戸籍が消滅してしまうなど。

これって70年たった今でもほぼ同じ批判が当てはまると思う。

面白いのは、主人公の妻が、ほとんど出てこないんだけど、凄く重要な役割で印象深い人物として心に残るところ。影の主人公と言っていいと思います。
主人公や、再婚相手や、娘など、妻の周りの人物を描くことで、妻の人物像が出来上がっていきます。戦争の犠牲となり、我慢を強いられ、辛い人生を生きた当時の女性の不自由さと悲しみ、辛抱強さが強く伝わってきます。


名言が随所に散りばめられているのも面白さの一つです。

「どんな人も一つは哀しみを背負っているもんだ」

「君のような、何かに所属し、自分で考えられないような人間がはびこっているうちは、日本はよくならないだろうね」

「生きているうちは、精一杯生きるべきだ」

「母さんは悲しいことばかりだったからこそ、強くなったんだ」

「母さんが立派なことは、お前を見れば分かるよ」