「銃」は中村文則さんのデビュー作。又吉さんがお薦めしていて読みたいなと思ってた。ダビンチで中村文則特集をしていたり、文芸誌で対談をしていたり、たまたまかもしれないけど、よく目にして。又吉さん、西加奈子さん、村田沙耶香さんを筆頭に、いろいろな人が中村文則さんとその本について、あちこちの雑誌で語っていた。

そんなことで興味をもって、デビュー作である「銃」を手にとったのです。

めっちゃ面白かった。

ドストエフスキーような、登場人物(ここでは主人公一人)の精神世界というか、考えを深く、ひたすら追っていく感じ。
もともと"おかしな"ところ("おかしい"という言葉で片付けられないものを中村さんは書いているんだけど、他に言葉が見当たらないので、とりあえず"おかしい"と書く)がある主人公が、偶然銃をひろったことによって、"おかしな"部分が増幅して表面化していく。それを第三者からの目線ではなく、おかしくなっている主人公の目線から書いている。一人称の主人公目線で書かれていて、読者は一見、主人公の行動に納得しながら読み進める。それを周りの登場人物たちの反応と台詞で、なんとなく(自分は)何かおかしいということに、主人公と同じ目線で読者も気づかされる。それがすごく面白くい。
また、犯罪を犯す人の内面の描写に、作者の、レッテルを貼らずに人を理解しようとする人となりを感じた。

銃
中村 文則
新潮社
2003-03



銃 (河出文庫)
中村 文則
河出書房新社
2012-07-05




何もかも憂鬱な夜に 中村文則

何もかも憂鬱な夜に
中村 文則
集英社
2009-03




カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1978-07-20





カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1978-07-20


カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1978-07-20


罪と罰〈上〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1987-06-09

 
罪と罰〈下〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1987-06-09

 

主人公の主張は「簡単にはできないからこそ、大切なものってたくさんあると思う」というもの。
「わざわざ手で黒板消したり、わざわざ家までプリント持って行ったりしなきゃいけなかったけど、確かに手書きで日記とかほんとめんどくさかったし、いろんなことが不便でいやになるときもあったけど、だからこそ生まれたものもいっぱいあると思うの。」
「そういうところで生まれたものこそ、かけがえのないものなのかもしれないって思うの」
「私、あの時、渡辺君を好きになったんだもん」

対して親友の反撃。
「車乗る、電車乗る、冷房も暖房も使う、スマホも使う、曲作る時だってもうパソコンで楽器の音打ち込む。自分にとって都合のいい新技術とか合理性だけ受け入れて、自分の人生を否定される予感のするものは全部まとめて突っぱねるって、そんなのずるくない?」 

前半は主人公に感情移入していて、面倒なことって大事だよなと思ってるんだけど、後半では親友の言うように、新しい技術を上手に使って面倒を回避するって論理的だなと思い始める。この本を読んで、自分の価値観を疑ってかかるというか、新しいものにもっとオープンでもいいのかなと思うようになった。古いものが廃れて、新しいものが流行るのであれば、その人気を出ないようにするのは無理なわけだし。

だけど、主人公の言い分は感情論で、技術面からの角度で話している親友と論争のポイントがずれている。「自分にしかできないことをする」が口癖で、努力することに価値があると主張する主人公と、機械ができるところはどんどん取り入れるべきで、無駄な努力は無駄であると考える親友は、一見対比しているように描かれている。だけど、親友は「自分にしかできない」新技術を「努力」して開発する。主人公が主張していることを、対照的な人物として描かれた親友がしている。この二人が代表している世間の考え方は結局のところ似ていて、ただ少しの表現の違い、見え方の違いがあるだけだと気づかされる。
二人の論争のずれから「ままならない」感じが浮彫になる。意思疎通がままならない。恋人との関係、夢がままならない。そして最後にとどめの一撃の「ままならない」ことがおこる。
親友の合理的な考えが終着点としてみえるけれど、それをも包括する、人生は好む好まざるに関わらず「ままならない」ことを主人公の会話ではなく人生をもって、作者が神の目線で読者に提示したような感じがする。

最後に、朝井リョウさんのお話はいつも伏線がごく自然に、でもなんとなく意識の中に残る形ではられていて、それが最後に回収されるときに、なるほどーっって思う。


ままならないから私とあなた
朝井 リョウ
文藝春秋
2016-04-11



 

 TED代表のクリス・アンダーソンが解説する。実際のプレゼンテーションから生み出されたノウハウは説得力があります。

特に印象に残ったのは、
『緊張することは悪くない。むしろ反対で、プレゼンテーターが緊張していると、聴衆は彼に好印象を持つ』ことや、『人は物語が好き。情報を出すときに、物語調に話をすると聴衆の興味をひきやすい』こと。
ノウハウがそれぞれ具体例とともに記載されている。

具体例はプレゼン者名付きで紹介しているので、実際のプレゼンを見ることができる。伝説の回や、名台詞なんかも書いているので、TEDファンとしても面白い。

だけど『一番大切なのは、プレゼンテーターが語るに値するものを持っているか』。

TED Talks


TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド
クリス・アンダーソン
日経BP社
2016-07-15


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